act3.再会

「お、お前は!?」
スティーブが驚き声をあげると、片方の影の持ち主が答える。
「よっ。スティーブじゃねぇか。こんなところでコソコソと何してんだ?」
「た、たしか…」
スティーブは無い頭を振り絞って記憶を奮い起こした。
「千尋!?」
せっかく思い出したスティーブにその千尋と呼ばれた男は
「たしか…って、なんだお前!オレのコト忘れたんじゃないだろうな?!
やっぱ、お前の馬鹿さは変わってないな。」
と言い放った。
「ひどいよ、千尋。」
スティーブはむっとして立ち上がった。
「お、なんだ やるか?」
「オレは今追われてるんだ。見つかるからどっか行ってくれよ。」
「何かやらかしたのか?まったく、馬鹿だな。」
二人のやり取りにやっともう一つの影の人物が口を開いた。
「千尋、いいすぎだよ。スティーブがかわいそうだよ。」
「葵〜。お前だけだよ、オレの味方は〜。」
スティーブは満面の笑みを浮かべた。
この二人はスティーブの友人の千尋と葵。双子である。
顔つきはほぼ同じだが、千尋の方がややつり目である。
性格は180度別で、兄の千尋はイヤミな性格に対し、弟の葵は優しく、穏やかである
「で、何しでかしたんだ?」
同じ質問を千尋が繰り返す。スティーブは渋々事の成り行きを説明した。
こんな騒がしくしていてラノマが気づかないわけが無い。
とうとう見つかってしまった。
「あーっ!見つけたーーーーーっ!!金払いなさいよ〜〜〜っ!!!」
「げっ、見つかった…千尋のせいだぞーーーーーっ!!」
スティーブの顔が強張った。しかし、逃げるには遅すぎた。
ラノマの手がしっかりとスティーブの首を締め付けていた。
仕方なく正直に謝った。
「ゴメン…実は財布を落としたみたいなんだ…」
「え!?それで逃げたのねっ!」
千尋と葵にもラノマの怒りがひしひしと伝わってくる…
「ドコで落としたか覚えてないの?」
葵がフォローした
そこで冷静に考えてみると、パンのコトを思い出した。
「あっ…」
「何か思い出したの!?」
ラノマが問うと
「もしかしたら…お姉さんに持ってかれたのかも…」
「はぁ!?何それ、どういう意味?」
と聞かれ、ラノマと千尋と葵に説明したところ、その女を捜そうということになった。
「どんな特徴なんだ?」
「えーっと…確か、長い金髪で、どっかのお嬢様のような服着てた。
 すっごい目立つ格好だったから見たらわかると思う」
そこで千尋が提案した
「バラバラに探してもなんだから、二手に分かれようぜ」
「いいわよ」
とラノマが言う。
話し合いの結果『スティーブ・葵』『ラノマ・千尋』という組み合わせになった。

ラノマと千尋はスティーブの言っていたパン屋のあたりを探していた。
「あんた、何ていう名前なの?」
「オレは六条千尋、千尋でいいぜ」
ラノマの問いに千尋が答えた
「あたしはラノマ・ギルバート。それより、あんたとスティーブってどんな関係なの?」
「オレと葵が昔旅してたとき、スティーブの村に行った時知り合ったんだ。葵っていうのはオレの弟だ
それにしてもアイツはホントにバカだな…財布ごとパンを他人に渡すだなんて」
「ホント…あたしが最初に会った時もザコモンスター相手にやられそうになってたのよ」
「ホントか?成長ねぇなー…剣士の癖に」
二人の会話はスティーブのけなし合いへと変化していった。
妙に気が合うようだ。
そのころ、スティーブと葵は大通りをアテもなくウロウロしていた。
「どっちの方向にいったか覚えてる?」
スティーブは今日記憶を呼び戻してばかりでいる。
「あの城と逆方向に歩いてたような気がする」
王都の端に位置するブリスベーン城を指差してスティーブが答える。
この二人はラノマと千尋みたいな会話にはならず、平和に目的を果たそうと勤めていた。
結局見つからずに、中央広場のあたりで4人は再び出くわした。
「見つかったか?」
「全く…」
はぁ…と4人をため息をついていると、突然周りが騒がしくなった
一同がその方向を見ると、長い金髪でどこかのお嬢様のような服を着た、
まさしく今探している人物が黒尽くめの男に追われていた。
手にはスティーブが渡したパンの袋を抱えている。
「あ、あの人だ!!!!」
「よし、オレ達も追いかけよう」
と、千尋が言うと
「あの人追われてるみたいだよ、助けなくていいの?」
葵が口を挟んだ。
「そ、そうね。ひとまず止まってもらわなくちゃいけないわ」
全員一致で黒尽くめの男を取り押さえることにした。
スティーブが剣を振りかざして、男たちの前に立ちはだかった。
やはりスティーブである、負けるのは目に見えている。
「何を追いかけているんだ!この悪の組織め!!」
「何をいっているんだ!どかないとお前もタダじゃすまないぞ!」

スティーブを囮にし、他の3人は逃げている女を助けた。
その女は不思議そうに3人を見つめている…。
「あなた達はいったい…?」
「キミの持ってる袋を返してもらいたいんだ」
「コレは、私が変な男の人に大通りでもらったものなんですけど」
葵が女に言うと、こういい返してきたので、ラノマが言った。
「その変な男が、その中に財布をいれっぱなしなのよっ!!返してもらわないと
 あたしが困るのよ!」
その迫力におされ、袋を渋々返した。
「これからの生活の費用にしようと思ってたのに…」
「何あんた財布入ってたの知ってて返そうとしなかったわけ!?」
「ごめんなさい…」
そんな中スティーブが命からがら逃げてきた。
「財布…返してもらえた?…」
「返してもらったわよ、追っ手は?」
「みんなを見失ったから諦めて帰って行ったらしい」

「どうして追われてたんだ?」
千尋が聞いたところ、どうも彼女はこの国の王女らしく城での生活に嫌気をさして
逃げ出したところ、城の追っ手に追われていたという。
一同は驚きを隠せなかった。
王女とは清楚で可憐なイメージがあったが、実際こんなおてんばな王女がいていいのであろうか
「私…どこか遠くに行きたいの、城じゃ見れなかったものを国からでて見てみたいの
 皆さん…旅人さんですか?だったら一緒に連れて行ってください!!」
あまりの王女の期待にあふれた瞳に、「違う」とは言えず、スティーブがそうだと言って
しまったので、急遽4人は旅人となってしまうことになった…
かくして、5人はあてもない旅にでることになった。

act3・END



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